蜘蛛と蜂の二人旅企画①

 蜘蛛と蜂の二人旅企画①

 彩り

「楽しみだなぁ。」
瞳を細めてスズメバチが笑う。
太陽に照らされて輝く金の髪を眺めながら瞑は彼の後を付いて歩いている。
彼の手には保冷剤入りのチーズケーキ入った箱がひとつ。
以前にスナイロユンクの少女から紹介を受けた店で購入したものだ。
長時間店のケーキを試食し、悩みあぐねいた結果
種類の異なるチーズケーキを一つ購入した。
１つは店員に進められたもの、１つはスズメバチが購入したものそして、１つは瞑が選んだものでもある。

「なぁ、これからどこに向かうんだ？」
ふと、瞑が声を掛ければ鼻歌は途切れる、振り返った男の空色の瞳が細められた。
「可愛らしい男の子と綺麗な世界へ」
あの場所は、景色も綺麗なんだよね、と付け足して、スズメバチは笑う。
「多分、瞑も気に入ると思うよ。」
蜘蛛は個人の島へ訪れない。スズメバチの言う綺麗な世界というものを
試しに空想してみた所でどの様な場所か等想像もつかず眉根を寄せるだけに終わった。

「ここから、かな。」
何も無い草原で立ち止まり、スズメバチが何度か踵と踏んで確かめては瞑を振り返る。
「じゃあ、一気に飛ぶから、ほら、手、繋ぐよ。」

◆◆◆

柔らかく頬を撫でていく感覚に、目を細めながら、瞑は隣に立つ男を見遣る。
今にも掛け出しそうなほど嬉しそうに前方を見つめては小さくガッツポーズを取る男を見る限り
空間の転移にはどうやら成功したらしい。
青々と茂る葉の合間から滴る雫が太陽光に反射してキラキラ光る。
木々の合間から伸びる木漏れ日と、雨上がりの森は瞑の知る西の森よりも清涼な空気を纏っている。

そして不思議そうに首を傾げた、ネオピグミーの少年と視線が会う。
「おい、スズメバチ　彼がお前の言う可愛い子か？」
大きな瞳と人の良さそうな顔立ち、誰からも愛されそうな容姿と柔らかな雰囲気は
確かにスズメバチの言葉に同意せざるおえない。
少年は太陽に煌く髪を揺らして、人懐こい笑顔を向けると蜂へと近づいて来た。
それに雀蜂は人好きのする笑顔を浮かべて、小さく手を振り、手にしたケーキを肩上まで軽く上げた。

「はじめまして、だね。以前こちらの世界にうちの凶ツ鳥が世話になったと聞いたんだよ。
　それで、ちょっとこの世界に立ち寄らせてもらったんだ。手土産はケーキしかないけど
　食べてくれたら嬉しいな。」

「わ、ありがとうございます！嬉しいなぁ！
 あ、それとはじめましてスズメバチさん！僕はツーツクと言います。」

「あぁ宜しくね！ツーツク君！」

太陽の様な少年（ツーツク）は、大きな瞳を輝かせ、丁寧に雀蜂へとペコリと挨拶を返し笑う。
余りにも邪気の無い存在に、思わず雀蜂は目を細める。
以前に世話になったとは言え警戒心よりも好奇心が出ているのだろう
懐っこい性格に思わずスズメバチの表情も綻ぶ。

「今日はちょっとしたご挨拶程度なんだけど
　この世界は空気も、きれいだし…これからも瞑と俺が時々お邪魔すると思うんだ。
　その際には、君の仲間も紹介してほしいな。今度は皆で砂糖菓子でも食べながら話そうよ。」

さり気なく、再度訪問するメンバーの中の一人にしれっと瞑の名前が入ってて
思わず瞑は雀蜂の足を蹴るが、彼にはこたえていないようだ。

「二人はこれからどちらへ向かうんですか？」

大きな掌でツーツクの髪をわしわしと撫でて、彼の問いに雀蜂が笑う。
女王蜂の所へ向かう迄の道中に関しては何も考えていなかった。
…ツーツクの眩しい笑顔にある一人の人物が脳裏を過ぎる。

「そうだなぁ、次は少し足を延ばしてみようと思うんだ。」

手に馴染むさらさらとした髪の感触、鮮やかな世界を名残り惜しく思いながら
雀蜂はそう答えた。

 
ツーツクさん宅→しんりちゃん宅へ移動。
蜘蛛と雀蜂の旅は始まったばかり。

コメント 1

Az様、こんばんは＾＾
うちの子が、Az様の小説に出して頂けて、素敵なお二人に構って頂けて幸せです///
夢みたいな時間をツーツクに、有難うございました(*´▽｀)
しかも、素直で、可愛い感じの良い子に書いていただけて…；ω；ｳｯ有難うございました。
実は結構大雑把で自分勝手な子ですが、こんなツーツクなら可愛いなあ…と思い、
とても楽しく読ませて頂きました*><
森の中で会うという設定も、ツーツクの好きな色のイメージが緑色なので、嬉しいです。
チーズケーキも、ありがとうございます(＾＾*)
あとで、テュッテやユーファナスと一緒に、美味しくいただくと思います♪
今後のお二人の道中も楽しみです。お二人の距離感が、とても好きです*
作品に出して頂き、本当に、有難うございました！m(_ _*)m
by 凪里 (2014-07-20 00:49)